音ゲー プロトタイプ写真館
音ゲー黎明期の史料─当時の雑誌や映像などを紐解くと、開発中の画面写真が掲載されていることがある。
今回は、開発中の音ゲー画像特集ということで、14個の開発中画像を製品版の画像と並べて比較・解説していこうと思う。過去に紹介した画像に関しては元記事へのリンクを貼ってあるので、より詳しい内容を知りたい場合は元記事をお読み頂きたい。
丸いビートマニア
beatmania 1stMIX(開発中)のみどころ
- ノーツの形状が丸(球体)
- スコア横のゲーム名が「DJ BEaTS」
- 2人プレイなのにグルーヴゲージが一本
- 判定ライン(赤ライン)が無い
beatmania 1stMIXの開発中画像。ノーツが丸い形状になっているのが印象的なこの画像だが、五鍵ビートマニアの開発過程がよく分かる貴重な史料でもある。
ビートマニアは当初「DJ BEATS」という名前で開発されており、当初はポップンミュージックのような「大きな丸ボタンが3個+中央部にターンテーブル(1P・2P共用)」という操作形態だった。
開発が進み、DJという世界観に合うのは「鍵盤しかない」ということで、鍵盤のように見える最低限の数として「5個の四角いボタン」に変更することになったのである。
この開発中画像では既に画面下部が鍵盤のグラフィックになっているが、ボタンが丸かった頃の名残りでノーツは丸いままだったもの思われる。
参考記事:ビートマニア誕生秘話
AMショー'97版ビートマニア
beatmania 1stMIX(AM'97版)のみどころ
- 判定文字の下にグルーヴゲージ残量が表示
- ターンテーブルの素材がプラスチック
- 2人プレイなのにグルーヴゲージが一本
- 判定ライン(赤ライン)が無い
beatmania 1stMIXが初披露されたAMショー'97。「ゲームカタログII」では、この時に出展されていたビートマニアをプレイする様子が約10秒収められている。
このバージョン、判定文字の下にグルーヴゲージのようなものが表示されている。視線を移動しなくてもグルーヴゲージ残量が確認できるのだがノーツが見づらくなってしまっている。
相変わらずグルーヴゲージは1P・2Pで共用。このバージョンをプレイしたucchy's page管理人は「一方がダメだと当然クリアできない」と記しており、二人で遊ぶ場合は両方ともある程度の腕前が無いと足を引っ張ってしまうことになる。
「ゲームカタログII」の映像には筐体の姿も映っているが、ターンテーブルに表面に光沢があり、プラスチックのような素材になっていることが確認できる。「IIDX INFINITAS専用コントローラ エントリーモデル」のターンテーブルに近い材質になっているようだ。
参考記事:ベールを脱いだビートマニア
ポップン1 四角いポップ君と謎のテクノ
ポップンミュージック1(開発中)のみどころ
- レーンが明るい
- 全レーンのポップ君が同サイズで同色
- ポップ君が角ばっており、目つきが悪い
- MiMiとBambooのキャラデザインが違う
- 謎の楽曲「TECHNO GO GO」
AMショー'98に出展されたポップンミュージック1。「コナミ年鑑'98」には、レーンの背景が明るくポップ君が全て黄緑色という衝撃的な画面写真が掲載されている。
この「白いポップン」だが、画面下部のボタン表示が全てピンク色であることから、開発初期のポップンミュージックはボタンが全て同じ色(ピンク?)だったのかも知れない。
なお、この画像のミミは開発中のデザインで、初代筐体やイラストブックでも確認することができる。
この「白いポップン」の画面写真には「TECHNO GO GO」という楽曲が表示されているが、BEMANIシリーズにこのような曲は存在せず、開発中に削除された幻の楽曲だと思われる。
参考記事:音ゲーが席巻するAMショー'98
3rdMIX 謎の譜面たち
beatmania 3rdMIX(開発中)のみどころ
- 譜面が違う
「ゲーメスト 1998年10月15日号」に巻頭スクープで掲載された「beatmania 3rdMIX」では9曲の画面写真が掲載されているが、いずれも製品版の譜面と異なる。
コナミは開発中の画像のBPMや譜面をダミーのものに差し替えているケースが多い。稼働前に譜面を研究されることを嫌ったのだろうか。
参考記事:ゲーメスト本気を出す
5thMIX 幻の選曲画面
beatmania 5thMIX(開発中)のみどころ
- 3rdMIXに先祖返りしたようなレコード配置
- 「DO IT ALL NIGHT」もう一つの幻ロゴ
- ☆2なのに「PLAY LEVEL:HARD」
- 選曲画面右にDancemaniaマーク
「ザ・プレイステーション 1999年12月3日号」に掲載されている「beatmania 5thMIX」の紹介記事では、開発中の選曲画面が確認できる。
製品版5thMIXは右側の楽曲リストから選択する構成だが、開発中の写真ではレコードを回して選曲したい曲を画面中央に持ってくる3rdMIX以前の方式になっている。
5thMIXは開発当初、前作4thMIXのように曲名ロゴが用意されていたが、容量の都合上カットすることになった経緯がある。この没ロゴは公式サイトに掲載されていたが、この画面写真の「DO IT ALL NIGHT」の曲名ロゴは公式サイトに掲載されていた没ロゴとも異なる。
5thMIX公式サイトに掲載されていた「DO IT ALL NIGHT」の没ロゴ。上の画像の楽曲ロゴと大きく異なっていることが分かる。
5thMIX 幻のプレイ画面
beatmania 5thMIX(開発中)のみどころ
- グルーヴゲージの配色が逆になっている
- キービームの色が4thMIXのようなオレンジ系
- 打鍵時に画面上の鍵盤の色が変わる(4thMIX準拠)
- フェーダーの個数が違う(画面内ターンテーブルの下)
前項の「ザ・プレイステーション 1999年12月3日号」にはbeatmania 5thMIXのプレイ画面も掲載されているが、こちらも製品版と異なる部分がある。
なんと、グルーヴゲージの配色が逆転しているのである。歴代ビートマニアシリーズのノーマルゲージは、クリア判定になるエリアが赤系統で、FAILEDになるエリアが緑or青系統の配色になっているのだが、この画像では逆転している。
製品版5thMIXでは鍵盤を押しても画面下部の鍵盤グラフィックの色が変化しないのだが、開発中の5thMIXは4thMIXと同様に押した鍵盤の場所がオレンジ色に変化している。キービームの色味も4thMIXと同じオレンジ系であることから、4thMIXをベースに開発している途中の画面写真であることが窺える。
5thMIX ALL PROファミ通譜面
beatmania 5thMIX(開発中)のみどころ
- 皿の量が多すぎ
「週刊ファミ通 1999年7月30日号」に掲載されたbeatmania 5thMIXの記事では、製品版より大幅にスクラッチノーツが増量されたALL PROの画面写真が掲載されている。
この譜面が採用されなかった理由として「低BPMで密度の高い譜面にしてしまうと、画面上に大量のノーツを描画する必要があり、ビートマニアの低スペック基板では処理落ちしてしまう」という問題が生じたのだと推察される。
5thMIXを期待していたプレイヤーを震撼させた幻の譜面だったが、密度的にはIIDXの「SCREW // owo // SCREW(SPH Lv.9)」と同程度であると思われるため、現代のIIDX基準ではこれ以上の高難度SCRATCH曲はHYPER譜面でも多数存在する。
ALL PROファミ通譜面をHI-SPEED(5thMIXの2倍速仕様)でシミュレートしたもの(注:ノーツの配置に若干のズレがあります)。
IIDX 1st幻の選曲画面と謎のテクノ
IIDX 1st style(開発中)のみどころ
- 曲名表記なし。ジャンルで選ぶ3rdMIX以前の仕様
- 背景の7KEYSモードを示す部分が別の表記になっている
- 謎のBPM120テクノ曲
五鍵3rdMIXと併行して開発されていたIIDX 1st style。「ゲーメスト 1999年3月15日号」に掲載されている開発中の選曲画面では曲名が表示されておらず、3rdMIXまでの五鍵のようにジャンル名から選曲する仕様になっている。
また、製品版1st styleでは選曲画面の背景はモードによって異なり、この忍者の背景は7KEYS/14KEYSモード用である。そのため、背景には「⑦」「SEVEN KEYS」(「SOUND SELECT」の後ろに描かれている)という表記があるのだが、開発中の画面写真では当該部分が「③」「???(「SOUND SELECT」の後ろの文字が異なるが判読できない」)」になっている。
なお、開発中の画像にある「BPM120のTECHNO」は製品版の1st styleには存在しておらず、幻の楽曲となっている。
IIDX 1stのプレイ画面は3rdMIX風味
IIDX 1st style(開発中)のみどころ
- 3rdMIX仕様の極太スクラッチノーツ
- 判定文字のフォントが異なる
- コンボ表記無し
- BPM789は明らかにダミー
IIDX 1st styleが初披露されたAMショー'98(正確には「IIDX JAMMA SHOW VERSION」というバージョン名で出展されていた)の様子が、マイコンBASICマガジン 1998年11月号に掲載されている。画面を細かく確認できる距離で撮影された写真はこの1枚しか発見できていない。
判定文字のフォントが五鍵3rdMIX以前と似ているのに加え、コンボ表記が無いことが確認できる。
また、スクラッチノーツの太さが鍵盤ノーツの2倍になっており、これは五鍵3rdMIXと同じサイズである。前項でも述べたように、IIDX 1st styleは五鍵3rdMIXと併行して開発されていたため、画面構成が3rdMIXと似通っているのが特徴である。
このAMショー'98で出展されたIIDXは後のインタビューで「開発進行度0%の状態だった」と語られており、その後稼働した五鍵comp1の「光るGREAT」「コンボ表記」「EX-SCORE」「極太スクラッチノーツの廃止」等を取り入れた上で正式稼働することになる。
緑のIIDX 3rd style
IIDX 3rd style(開発中)のみどころ
- イメージカラーは緑色
- IIDXをピンクに染めたのはGOLI
オペレーター向けカタログに掲載された3rd styleのモード選択画面。製品版はピンクを基調としたデザインだが、開発中のモード選択画面は緑色になっている。
3rd styleは開発途中でシステム画面のデザインの担当者が変更になっているのである。
公式サイトのFROM STAFFによれば、当初はVJ GYO氏がシステムデザインを担当していたが、ムービー制作に専念するため、途中から新人デザイナーのGOLI氏に一任したというのだ。
イメージカラーをピンクに変えたのはGOLI氏のようで、dj TAKA氏と共に割と好き勝手に世界観を構築したのが3rd styleだった。
当初は、CYBER-beat-NATIONというテーマに即したゲーム画面のデザインとは・・・と作業を進めていたのですが、途中から一括してGOLIに引き受けてもらうことになりました(無理矢理じゃないよ)。
3rd style公式サイト FROM STAFF(VJ GYO氏)
前回の基調色がブルーだったので、今回はピンク系。といった安易な考えから始まり、Printing Graphic DesignのBEDLAMを色々と困らせて(やっぱり駄々をこね)しまいました。
3rd style公式サイト FROM STAFF(GOLI氏)
キャッチコピーが「CYBER-beat-NATION」に、そしてイメージカラーがピンクと決定してからはスムーズそのものというか、ハッキリ言ってGOLIと2人でやりたい放題だったような気がするなぁ。
KAGEの不安げな顔をよそに、今までの雰囲気とは全く違うサイバーテクノワールドに仕上がったゼ。
3rd style公式サイト FROM STAFF(dj TAKA氏)
参考記事:ついに花開くIIDX 一躍大人気に
IIDX 9th style 異質な選曲画面
IIDX 9th style(開発中)のみどころ
- 8th以前のパーツが流用されていない
- Windowsベース基板のために一から作り直した可能性?
- フォルダ・楽曲バー・クリアランプ・レベル表記無し
TWINKLE基板からWindowsベース基板に刷新されたIIDX 9th style。「アルカディア 2003年7月号」に選曲画面が写っているが、楽曲バーやレベル表記が無い。6th style以降は楽曲バーの左端にレベルが表示されるようになったが、この開発中の選曲画面では、レベルを確認するにはカーソルを合わせるしかない。
製品版では8th styleと同じフォントでレベルが表示されており、新たにクリアランプを搭載した楽曲バーが存在する。
Windows基板に移行するにあたり開発環境が変わり、8th styleまでの素材をそのまま流用することができず、一から作り直していく途中の画面写真だったのではないだろうか?
参考記事:IIDX、オンラインゲームになる
太鼓の達人 女の子ver.
太鼓の達人(開発中)のみどころ
- メインキャラは女の子
- 譜面は左右から中央に流れてくる
- 魂ゲージではなく優劣ゲージ
太鼓の達人は、開発途中で画面構成が二転三転しており、「ふんどし姿の男性がメインキャラという案があった」というエピソードは公式サイトでも掲載しており有名な話である。
しかし、「DIME 2003年6月19日号」の開発者インタビューでは「メインキャラが女の子で左右から譜面が流れてくる案もあった」と語られており、実際にその画面写真も掲載されている。
この段階ではまだ「どんちゃん」「かっちゃん」は存在しておらずシンプルな画面構成になっており、まだ模索の段階であることを窺わせる写真である。
GOTTAMIX2 GOLD
GOTTAMIX2(開発中)のみどころ
- 金色に輝くロゴマーク
- 製品版では緑色になってBonus Editに使われている
PS1オリジナル作品として登場したGOTTAMIX2。「HYPERプレイステーション 2000年7月28日号」には、開発中のタイトル画面が掲載されている。このタイトル画面は製品版でBonus Editの方のタイトル画面に使われている。
参考記事:Togoシェフが描く五鍵の未来像
完全異色!CS 4thMIX
最後に紹介するのは、コナミが直営店等で配布していた販促誌「コナミマガジンVol.13」に掲載されていた家庭用beatmania 4thMIXの画面写真だ。
コナミマガジンVol.14より。「今度は完全移植」と強調しているのは、家庭用3rdMIXでアーケード版の「コンボ表示」「コンボ加点」を移植せずに批判されたという経緯があるため。
家庭用4thMIX(開発中)のみどころ
- キミは「6つ鍵盤」を操れるか?
もちろん家庭用4thMIXが六鍵として開発されていたわけでは無い。
だが、開発途中のダミー譜面だとしても、6鍵レーンにノーツを配置する必要は無い。
そもそも6鍵レーンにノーツを流すには、プログラムを弄るか画面写真を加工する必要があるのだが、ダミーの画面を作るためにわざわざプログラムを弄る必要性が感じられない。
画像を加工した痕跡も見当たらず、なぜこの画面写真が生まれたのかは全くの謎である。
開発中の音ゲー画像特集はいかがだっただろうか?
開発中の画像は、そのゲームが完成するまでの過程や試行錯誤の様子が垣間見える貴重な史料でもある。
本来、表に出ることがない開発中の画像。このような貴重な映像をカメラに収めたメディア各社に敬意を表しつつ、今回の記事を終えたいと思う。
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