ゲーメスト本気を出す
2ndMIXが絶好調な中、ゲーメストはオペレーターの声や音ゲーブームについての分析を行っている。提携するゲームセンターを持つ同誌ならではの内容で、当時のプレイスタイルが垣間見える貴重な内容となっている。
そして、AMショー'98が近づく中、続編3rdMIXの情報も発表される。ゲーメストではこの時期からビートマニアを巻頭カラー記事扱いに昇格させており、力の入れ具合も変わってきている。
ゲーメスト、3rdMIXを予想する
ゲーメスト1998年7月30日号に掲載されているインタビューでは、大ヒットした2ndMIXの次なる展開についてコナミの開発部長販売促進部岡本氏と、販売促進部の小坂田氏が語っている。インタビューの中では「次は単純に3rdというわけではない」「AMショー'98で想像以上にあっと言わせる」との発言がある。
小:次回作については私もよく質問をうけるのですが、次回は単純に「3」ではありません。
岡:私もただ単に3rdで終わらせるわけにはいかないなとは思っています。いろいろな展開も考えていますし。期待して待っていて下さい。
小:今度のAMショーに期待していてください。想像以上にあっと言わせますよ。
ゲーメスト 1998年7月30日号
そして、ゲーメスト1998年9月30日号では、様々なアーケードタイトルの続編を予想する特集記事「噂の続編」の中で、ビートマニア2ndMIXの続編「ビートマニア3nd」(当時は3rdMIXは未発表)について以下のように書かれている。
●ビートマニア 3nd
ゲーセンで新しいジャンルを切り開いたビートマニアシリーズ。このまま、曲を変え続けて、イベントも交えて盛り上げて、数年は続けていってほしいところ。
ゲーメスト 1998年9月30日号
ゲーメスト、3rdMIXを巻頭スクープ
そして、次号にあたるゲーメスト1998年10月15日号では、3rdMIXの制作が正式に発表となり、AMショー'98への出展が予告された。ゲーメストは「巻頭スクープ!!」として2ページに亘って特集している。
ゲーメスト1998年10月15日号より。2ndMIX時代の記事は誌面後半だったが、遂に誌面トップ記事として掲載され、以後は毎号巻頭カラーページで記事が組まれるようになっていく。
この巻頭スクープ記事では、新システムと新曲の一部が紹介されている。
ちなみに3rdMIXの新要素は、初心者向けにゲージが上がりやすくノーツの少ない譜面で遊べる「EASYモード」(現行IIDXのEASYオプションとは異なる)、エキスパートモード専用ゲージの登場(ゲージが100%から始まり0%になると強制終了、ゲージ残量はステージ持越しで回復無し)、新モード「バトルプレイ」(1P 2Pサイドで同一の譜面をプレイできる)について掲載されている。
なお、エキスパートモードは隠しコマンドの入力が必要だが、稼働前のこの時点ではコマンドまでは掲載されていない。
ゲーメスト、ビートマニアを分析する
ビートマニアの魅力とは
ゲーメスト1998年10月30日号では「ビートマニア解体新書~HITの理由~」という特集記事が8ページに亘って組まれている。担当編集者は従来からのスー氏と、この号から新たに登場した、はまー氏。3rdMIX稼働後はDJ Hammer&DJ SUWが譜面攻略記事を担当していくこととなり、攻略記事の質も向上していくこととなる。
今、巷で大流行の「ビートマニア」。しかし初代の発売直後は、普通の「パーティー向け大型筐体」だった。コナミ側も、当初は「3rd」のリリースまでは予想していなかったのではないだろうか?
「渋谷を目指してつくった」とは開発者の談だが、今や渋谷などの繁華街に留まらず、日本中、いや世界を舞台にしてさえ、アーケードゲーム業界を引っ張ることのできる存在になりつつある。
そしてそれを成しえた原動力は、メーカーの営業戦略だけではない。こういった大型機を指向するライトユーザーはもちろん、普段は筐体でしかゲームをやらないような学生や社会人、そしてマニアが自然とムーブメントをつくり上げていったのである。
ゲーメスト 1998年10月30日号
そして、ビートマニアがヒットした理由として「曲やプレイしている人たちのカッコよさ」「クリアにとどまらず、その先にあるDP等のチャレンジ要素」「プレイが音としてフィードバックされることで、自身や周囲が上達したことをハッキリと実感できる」という3点を挙げている。
プレイした結果、生まれるものは使った気になって満足している自分の思考ではなく、ギャラリーの耳へ普遍的に訴えかける「音」である。
その直感的感覚の持つパワーは、音楽に精通していない人でも聴けば「何となくスゴい」と感じてくれる。コンソールが至極単純で、逆にそこから想像されるパフォーマンスに説得力があるからかもしれない。それだけに、上達がダイレクトに反映されやすい。
できるようになった時点で本人でさえビックリするほど「デキる!」と感じられるということだ。このときの感動が、やはりプレイヤーを虜にして離さないのだろう。
ゲーメスト 1998年10月30日号
ゲーメスト1998年10月30日号より。アリカのTGMを例示しながらビートマニアの魅力を分析しているあたりゲーメストらしさが感じられる。
ucchy's page
過去の記事で紹介した制作陣とプレイヤーとの座談会でも登場したビートマニアの個人サイト。2chが存在していない当時に、掲示板形式で活発に情報交換が行われていたサイトの一つが「ucchy's page」である。
現在は閉鎖してしまっているが、ゲーメストの記事には同サイトのトップページの画像が掲載されている。
ゲーメスト1998年10月30日号より。当時お世話になっていたプレイヤーも多いのではなかろうか?
ゲーメスト、100人に聞きました
スコアよりクリア
この「ビートマニア解体新書」では、筐体設置店協力のもと、来店客へのアンケートと店舗へのインタビューを実施、その結果を掲載している。
当時のプレイヤーはスコアをあまり気にせず、楽曲を楽しむことを重視していたようである。
ゲーメスト1998年10月30日号より。プレイ経験のある49名からのアンケート結果となっている。
単純に点数を気にするよりはノリを重視する人の方が多いというのが45%という数値から見えてくる。クリアを重視(プレイ時間を長く)する人がもう少しいるかもと思ったが、やはりノリを重視できるというゲーム性がここに反映した形となった。
例え続編を出すにしても単に難しい曲を作るのではなく、いい曲ができてそれが結果的に難しくなるという状況を期待したい。ゲーム性に特化するよりは、あくまでも音楽性やノリを追及して欲しい。
音楽はジャンルこそ隆盛を繰り返しているが、"音楽"そのものに飽きるということはない。そこである程度のジャンルをカバーしているというのは、このゲームの強みのひとつ。"ある程度クリアしたら飽きる"ということがないのもそこに要因があるのだろう。それはパターンゲームの面白さと同じといえる。
ゲーメスト 1998年10月30日号
スクラッチは左手
プレイスタイルについての設問では、右手と左手をどのように運用しているかを調査している。49名の解答者のうち5名がスクラッチを左手で取っているという結果が出ている。
ゲーメスト1998年10月30日号より。49名中11名が鍵盤を片手でプレイしている。
この「スクラッチを左手で取る」という攻略法はゲーメストの3rdMIX攻略記事でも「動く右手にボタンは任せ、掟破りの左手交差」と触れられており、後に家庭用作品「GOTTA MIX」のコナミ公式攻略本でも「CROSS STYLE」として、同作の高難度曲「GENOM SCREAMS」「HELL SCAPER」等はこのCROSSを推奨している。
ビートマニアゴッタミックス公式ガイドより。根拠としては「複雑な譜面は、利き手で鍵盤を取った方がよい」とのことであるが…
オペレーターの声
この記事ではオペレーターにもインタビューをしている。以前紹介した経済誌「日経ビジネス」や「経済界」の内容とほぼ同様の結果であり、新規客層の開拓に成功していることが改めて確認できた。
「インカムはかなり良い。ある程度の腕前以上の人がプレイしているとギャラリーができ、それを通りがかりの人が…という感じでギャラリーが増え、盛り上がり感がある。また空いている時にギャラリーだった人がプレイしてみる、という好循環が続いている」
「プリクラやメダル等のお客がこちらにも来たと感じる」「確かに新規客層を取り込んだことは事実。だが主にプレイしているのはやはりマニア層。マニアの高度なプレイを見て、引いてしまう方がいることも実際にある」
「カップルが増えた」「さほど変化はありませんが、多少女性が増えた感がある」
「類似品は人気低下を早めるので程々に。人気商品の後を追いかけるより、独自性を持った商品の開発を」「同種ジャンルの乱発は人気の低迷につながる恐れがあることも懸念せずにはいられない」
ゲーメスト 1998年10月30日号
3rdMIX稼働、ブームは絶頂へ
1998年9月28日に3rdMIXが稼働。業界誌「アミューズメント産業」のインカムランキングでは、3rdMIX稼働直後のインカムがビートマニア史上最高のインカムとなっている。
2ndMIXまでは稼働後もじりじりとインカムを上げてきたが、3rdMIX以降は稼働直後がピークで徐々に下がっていくという一般的なタイトルと同様の傾向が見られるようになる。
プレイヤーの間で定説となっている「五鍵は3rdが絶頂期」という感覚は、おおむね正しいようである。
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