五鍵スクラッチ音変化の仕組み
「五鍵ビートマニアはターンテーブルを回す速度で音が変わる」。五鍵を経験したプレイヤーなら耳にしたことはあるのではないだろうか?
実際、五鍵でターンテーブルの回し方で音が変化する作品は存在する。だが、五鍵の中でも、バージョンや楽曲によって音が変化するかどうかは異なる。
スクラッチによる音変化について調べていくと、実に興味深い仕様が次々と判明した。キミもスクラッチを駆使して音を自在に変化させ、ハイレベルなDJを目指そう!
スクラッチで音が変化するバージョンは?
【2021/8/12追記】BMIII筐体でも音変化するスクラッチが存在していることが判明しましたので、一部文章・表を修正しました
(注)音声が流れます。
ターンテーブルを回す速度による音変化について明記されている資料は少ない。
五鍵5thMIX公式サイトの「質問コーナー」では、スクラッチによる音変化について「1st・comp1・5thMIXについている機能」と書かれているが、この後に稼働するcomp2・CORE REMIX・7thMIX・THE FINALもスクラッチの音変化に対応している。
ていうか ジャングルのスクラッチを思いっきり強く回すと音がかわるんですね
これは beatmania 1st, completeMIX, 5thMIX についている機能です。スクラッチのスピードによって音程を上下させてます。強く回すと音程があがりますが、弱く回せば低くなります。でも割り当てられている音色によっては変わらないのもあります。
5thMIX公式サイト 質問コーナーその2
これはあくまでもAC版の話であり、CS版ではスクラッチの音変化は実装されていない。CS版ではターンテーブルの回転速度を検知できないためである。また、beatmaniaIIDXにはこの機能は実装されていない。
スクラッチのスピードで音が変化するバージョンをまとめると、以下の通りとなる。ただし、THE FINALとBMIII筐体の場合、従前のバージョンで音変化していた一部の楽曲が音変化しないようになっているため注意が必要である。
バージョン | AC版beatmania | beatmaniaIII |
無印 | 〇 | △(注2) |
2ndMIX | × | ─ |
3rdMIX | × | ─ |
comp1 | 〇 | ─ |
4thMIX | × | ─ |
5thMIX | 〇 | ─ |
comp2 | 〇 | ─ |
ClubMIX | ?(要調査) | ─ |
feat. D.C.T. | × | ─ |
CORE REMIX | 〇 | △(注2) |
6thMIX | ?(要調査) | △(注2) |
7thMIX | 〇 | △(注2) |
THE FINAL | △(注1) | △(注2) |
(注1)THE FINALでは、一部楽曲が非対応(「KEEP ON MOVIN'」「PARANOIA MAX」等)
(注2)BMIIIでは、ほとんどの楽曲が非対応(変化が確認できたのは「12.4」と「All is vanity」のみ)
音が変化するノーツは決まっている
音変化に対応する5バージョンの中でも、スクラッチで音が変化するノーツは決まっている。楽曲によっては音変化するスクラッチオブジェが一切存在しないものもある。
スクラッチの音変化が可能な楽曲は沢山あるが、その一部を動画にまとめてみた。
(注)音声が流れます。
ターンテーブルを回す速度で音変化する楽曲を8つ紹介。これ以外にも音変化するスクラッチノーツは数多く存在する。
意外と難しい?スクラッチ音変化のコツ
スクラッチで狙った通りに音を変化させるにはちょっとしたコツが必要である。音変化の仕様を調査したところ、以下のような仕様になっていることが判明した。
- ターンテーブルが反応した瞬間の音程はデフォルトの高さである
- ターンテーブルを回し続けるスピードが一定基準より速ければ音程は上がっていく
- ターンテーブルを回し続けるスピードが一定基準より遅ければ音程は下がっていく
- ターンテーブルを回すのをやめた段階で音程は固定される
つまり、音を変化させるには、音が鳴っている間ターンテーブルを回し続けることが必要であり、回し続けている時の速度の緩急で音程が上下するのである。
(注)音声が流れます。
tribe grooveのスクラッチを「音変化しない3rdMIX版」「速く回した場合」「回す速度を緩めていく場合」「回す速度を上げ下げした場合」で比較してみる(音変化ありverはcomp1版)。
上の比較動画で分かる通り、スクラッチの緩急で音程はアナログ式に変化する。同じアサイン音でも回し方次第で無数のバリエーションを生み出すことが可能なのだ。
また、この記事では便宜的に「音程が変化」と記載しているが、正確には再生速度も変化している。つまり、音程を上げれば再生速度が上がり、音程を下げれば再生速度は遅くなる。
過去にIIDXのエフェクターで存在した「PITCH」(再生速度は変化せず音程だけ上下する)とは異なる。
地力上げに最適な曲10選
スクラッチ音変化を練習するためには、ある程度譜面密度が低く、スクラッチが繰り返し配置されている楽曲がオススメである。スクラッチ操作に気を配りながら鍵盤を処理するのは意外と難しい。慣れないうちは譜面難度の低いモードでプレイするとよいだろう。
ここでは、比較的手軽にスクラッチの音変化を試すことができる楽曲を紹介していく。
tribe groove[comp1]
ターンテーブルに非常に長い音(歓声)がアサインされており、音変化をかけやすい。
中盤の長い縦連打地帯のスクラッチも音変化させることができるため、慣れてきたら縦連打を安定させつつスクラッチを決めていこう。
NINE SECONDS[comp1]
ターンテーブルに長めのサックス音が多用されており、面白い音変化をさせることができる。
判定が非常に厳しい曲なので、鍵盤をおろそかにしてFAILEDにならないように注意。
Attack The Music[comp1][comp2][FINAL]
繰り返し登場するスクラッチ(ミューゼェ)で何度も音の変化を楽しめる楽曲。
譜面難度が高いため、安定して演奏したい場合、低難度譜面を選ぶのもアリ。なお、ANOTHER譜面は非推奨(comp1のcrack styleは鍵盤配置が難しくなり、comp2の49 MUSIC MIXは音変化しない)。
BMIIIシリーズにも収録されているが音変化はしないので注意。
POPCORN[5th][comp2]
声ネタのスクラッチに音変化をかけられる初心者向けの楽曲。元々の難易度が低いため、余裕をもってスクラッチの操作を楽しめる。
BMIIIシリーズにも収録されているが音変化はしないので注意。
DEEP IN YOU[5th][comp2][FINAL]
現行IIDXでもプレイできるお馴染みの楽曲。難易度は中程度のため慣れてきたら挑戦したい。
PARANOIA MAX ~DIRTY MIX~[5th][comp2]
ターンテーブルにアサインされている声ネタやサイレン等、ほぼ全てのスクラッチに音変化をかけられる。
後半は同じサイレン音が繰り返されるため、回し方の違いによる音変化も楽しめる。
THE FINALとBMIIIシリーズにも収録されているが音変化はしないので注意。
Salamander Beat Crush mix CRASH MIX[CORE][FINAL]
CORE REMIXで音変化が楽しめる一曲。途中のスクラッチも音変化するが、最後のスクラッチ「フォーゥ!」が見せ場。原曲ではなくリミックスの方なので注意。
LIGHT MOTION[7th][FINAL]
7thMIXで楽しめる音変化曲。スクラッチの声ネタを音変化させよう。ちなみにCSIIDX13 DistorteDにも収録されているが音変化はしない。
(注)音声が流れます。
(※外部サイト)DRUM’N’BASS.LU氏によるLIGHT MOTIONのBORDER+PERFECTプレイ。0:32のスクラッチが音変化している。
12.4[BMIII]
BMIIIシリーズで音変化する数少ない楽曲のひとつ。スクラッチ「アーオォ」の他、一部のスクラッチ音が変化する。
(注)音声が流れます。
「アーオォ」だけでなく、低音が鳴るスクラッチ音も変化していることが分かる。BMIII無印フォルダの中でも高難度帯の楽曲なので注意。
All is vanity[BMIII]
スクラッチ音の「オールイズヴァニティ」等、一部のスクラッチ音が変化する。
(注)音声が流れます。
声ネタの他にも、鐘の音がしているあたりのスクラッチ音が変化している。なお、鐘の音がアサインされているわけではなく、同時に鳴っているスクラッチ音が変化していることも確認できる。
jamおじさんの壊し方
(注)音声が流れます。
まずはこの動画をご覧いただきたい。お分かり頂けただろうか…
なんと「JAM JAM REGGAE」では、一部の鍵盤ノーツにも音変化をかけることができる。
調査した結果、音変化をかけられる鍵盤ノーツが鳴っている状態でターンテーブルを回すと、鍵盤ノーツの音が消えてスクラッチ音が鳴ることが判明した。つまり、鍵盤ノーツなのにスクラッチノーツとして扱われているのである。
(注)音声が流れます。
鍵盤のキー音とスクラッチ音が干渉していることが分かる。
「鍵盤ノーツがスクラッチ音扱いになっている」ということは、鍵盤ノーツの音が鳴っている間にターンテーブルを回す速さを変えると音変化が起きるということである。
ただし、鍵盤ノーツ→スクラッチの順で音を鳴らすと、鍵盤ノーツの音は消えてしまうため、以下のような方法でスクラッチ音が干渉しないようにする必要がある。
- キー音を鳴らす前にターンテーブルを回し始める
- 曲の初めからずっとターンテーブルを回し続ける
前者の方法だと、鍵盤音を鳴らす直前で一瞬スクラッチ音が鳴ってしまうが、後者の方法なら、曲の開始時にスクラッチ音が鳴るだけで、不要なスクラッチ音を鳴らすことなく音変化がかけられる。
上の動画は曲の開始時から終了までターンテーブルを回し続けることで、余計なスクラッチ音を鳴らさないようにしている。
【2021/8/12追記】THE FINALに収録されている「HAPPY MAN」でも、鍵盤ノーツをスクラッチで音変化させることが可能であることが判明しました。
(注)音声が流れます。
(※外部サイト)DRUM’N’BASS.LU氏によるHAPPY MANのBORDER+PERFECTプレイ。明らかに鍵盤ノーツの音が変化している。
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