IIDX老人会は511号室を訪れる
ビートマニア、IIDX、bmIIIが開発されたコナミ東京テクニカルセンター。実は東京ではなく神奈川県にある施設である。所在地は神奈川県座間市東原5-1-1。秘密のシークレット5-1-1。この数字の羅列はIIDX老人会にとってなんの意味があるのでしょうか…?
今回のテーマはビートマニアが生まれ育った場所、コナミ東京テクニカルセンターである。我々IIDX老人会には511号室の重い扉を叩くことはできない。しかし、実際にその目で見てみれば、記憶に残る見慣れた風景が浮かんでくるはずだ。まるで、うたた寝中の夢のように…
全ては5-1-1から始まった
コナミ東京テクニカルセンターは、現在もコナミの商品開発・製造・物流を担っている施設である。1994年6月、上月景正氏が社長に復帰したタイミングで完成し、上月氏はこの施設をアーケードゲームの開発拠点とすることで、当時劣勢だった同社アーケード部門の強化を目論んでいた。
アミューズメント産業1994年9月号より。写真の日付が1994年8月1日になっていることから、完成直後の東京テクニカルセンターであることが分かる。
マスメダル機を含めて大型AM機器の開発に力を入れて行きます。今回、開設しました東京テクニカルセンターはその受皿として、開発から設計、組立ての一貫した製造ラインを完備、自社内で全て賄うことができます。
アミューズメント産業1994年9月号 トップインタビュー「AM産業の原点に立ち戻り、21世紀に向けての総合AM企業を目指す上月景正社長に聞く」
この施設で開発されたのが初代ビートマニア、IIDX、bmIII等のビーマニシリーズであることは以前の記事で述べた通りである。REMO-CON氏のツイートでもこの東京テクニカルセンターが紹介されている。
座間のコナミ前を車で通過🚗
— REMO-CON (@REMOccCON) May 7, 2021
20歳頃までこの近くに住んでて、その時は工場だと思ってたんだけど、後々 @iam_nota_djtaka さんとかに聞いたらそこで色々開発してたとか#beatmania #IIDX pic.twitter.com/rKAC62vlbH
REMO-CON氏のツイートより。
数々のムービーのロケ地になっていた
実写映像を扱えるIIDXが開発されると、この東京テクニカルセンターで様々なムービーの撮影が行われるようになった。街頭でのロケ撮影と比べると、自由に撮影ができるからだろう。
東京テクニカルセンターで撮影されたものだとはっきり分かるのはHEROIC VERSEの27th styleだろう。屋上のシーンで背後に映っている建物をよく見ると、東京テクニカルセンターの隣にある森永乳業の研究情報センターであることが分かる。
27th styleのムービー。屋上のような場所で撮影されているが、後ろに映っている建物に注目していただきたい。
東京テクニカルセンターの隣にある「森永乳業研究情報センター」。外壁の形状が27th styleのムービーに映っている建物と一致する。
27th styleのムービーでは、屋外の通路のような場所で撮影されているシーンがあるが、背後に見える特徴的な曲線状の外壁と赤色のポールが、東京テクニカルセンターのものと一致している。
27th styleのムービー。左側の曲線状の外壁と右側の外壁を繋ぐ赤いポールと、床面のグレーチング(金属製の網目状の排水蓋)をよく覚えておいて欲しい。
googleマップより。27th styleのムービーで映っていたのは上側の赤いポールだろう。
2nd styleの「Second Style」(削除曲)。27th styleの楽曲コメントで、同じロケ地であることが明言されている。昔のムービーで画質は粗いが、dj TAKA氏の背後に森永乳業の建物が確認できる。
このムービーは、夏真っ盛りの8月のある土曜日に撮影を行いました。dj TAKAにとっても、DAY BREAKERS(VJ GYO+GOLI)にとっても、1999年 夏の唯一夏らしい思い出(絵日記に書けそうな思い出)になりました。(中略)
ちなみに、ディレクター KAGE氏は、たまたまお休みだったんですよ(まあ元々休日なんですが・・・)。出社してたら、思いっきり出演してもらうことになってたんですがねー 残念です。
2nd style 公式サイト 楽曲コメント「Second Style」
20年前(!)に「Second Style」で初代メンバー達を撮影したロケ地を使いたい、とのこだわりから制作進行のNAGIに頑張ってもらいました。
…当日はあいにくの小雨…
三代目達のスケジュール、ロケ地の使用許可、レンタルで借りてる撮影機材や車…雨天決行せざるを得ません。(中略)
気ままで楽しすぎる3人の勢いやノリが、1999年8月23日と2019年11月23日、20年の時を超えて二つの光景を見事に結像させてくれました。
IIDX 27 HEROIC VERSE 公式サイト 楽曲コメント「27th style」
このほかにも、3rd styleの「Schlagwerk」では、テロリストとSWATが戦闘するムービーで同じ場所が使われている。戦闘服やモデルガン等を自由に扱えるという職場内ロケの強みを生かしたムービーである。
Schlagwerkのムービー。VJ GYO氏扮するSWAT隊員が走ってくるシーンで、床のグレーチングや、柵の形状が確認できる。
27th styleのムービー。柵の形状が一致しているのが確認できる。
実際に行ってみた
東京テクニカルセンターの所在地は神奈川県座間市だが、最寄り駅は座間駅(小田急線)ではなく、さがみ野駅(相鉄線)である。駅を降りてみると商店が立ち並んでいるが、少し歩くと住宅地になっていく。
相鉄線さがみ野駅が最寄り。横浜駅から30分ほどで到着する。なお、同じ座間市でも、小田急線の座間駅からはかなりの距離がある。
北口の駅前ロータリーを出て真っすぐ歩いていく。駅前にはスーパーやファーストフード店がある。
更に真っすぐ歩いていくと、右側に「森永乳業 研究情報センター」が見えてくる。「27th style」のムービーに映っていた建物だ。
駅から北へ向かって真っすぐ歩き続けること10分。外壁の曲線が印象的な建物が見えてくる。これがコナミ東京テクニカルセンターだ。
国道246号線との交差点という好立地。1994年の完成当時の写真と比較すると、ロゴマークが取り換えられているだけで外観に大きな変化はないようだ。
幹線道路(国道246号線)との交差点の角地に建っている東京テクニカルセンター。周辺は様々な企業の建物が並ぶ工業地域で、東名高速道路の綾瀬スマートインターから4kmと配送拠点としても申し分ないエリアである。
国道246号線を挟んだ向かい側では、三井不動産が大型物流センター「MFLP(三井不動産ロジスティクスパーク)座間」を建設していた。このエリアが物流拠点として優れていることが分かる。なお、同施設は2023年9月に竣工した。
周辺スポット散策
東京テクニカルセンターの周辺は工業地域ではあるものの、住宅地にも隣接していることから、近隣には様々な店舗が存在する。その中から、我々に関係の深いスポットを紹介していこう。
【5-1-1から徒歩7分】ゲームセンター「テクモピア座間店」。東京テクニカルセンターに最も近いゲームセンターである。この場所には2023年6月30日まで「ネバーランド2」というゲームセンターが存在していた(写真は「ネバーランド2」の在りし日の姿)。
【5-1-1から徒歩2分】東洋レコーディング株式会社。東京テクニカルセンターの隣に位置するレコーディングスタジオ。CDやアナログレコードの製も手がけている。
【5-1-1から徒歩9分】全IIDXerが畏怖する「マーレ」の名を冠したクリニックが存在していた。
IIDXは稼働していないので行脚erは安心して欲しい…
511号室の先には、651号室を訪れよう
ビートマニア黎明期に様々なドラマが生まれた東京テクニカルセンターだが、4thstyleの製作期間中にAM事業本部が新宿に移転することになる。
この頃には、ビーマニシリーズの制作部署はビーマニ事業部として一本化され、AM事業本部の傘下に置かれていたため、開発拠点も新宿に移ったようだ。
7th style稼働時のインタビューでTAKA氏は次のように振り返っている。
─シリーズは7作続いてきたわけですが、その中でご自身に何か変化はありましたか?
TAKA:そうですね……「3rd」から「4th」の間に制作環境が変わった(神奈川の座間から新宿へ制作室が移転した)ことは、僕個人の中では大きかったです。
アルカディア2002年7月号
移転先は新宿区西新宿6-5-1。東京都庁近くの新宿アイランドタワーである。
東京テクニカルセンターは、当時の若手スタッフたちがビートマニアというヒット作を生み出し、初期のIIDXスタッフが悪戦苦闘して危機を乗り越えて飛躍した場所でもある。スタッフにとって思い入れの深い場所だったのだろう。
TAKA氏はビートマニア最終作「THE FINAL」に書き下ろしたfellowsの楽曲コメントで次のように語っている。
ビートマニアの一番最後の機会に、敢えてNGとされる手法を全て取り入た上で、面白くていい曲を作ろう、という意気込みで作ったのがこの「fellows」です。
自分を大きく育ててくれた偉大なるビートマニアへの、感謝のメッセージでもあるのです。
ボーカルには、ビートマニアにゆかりのある方ということで色々探してもらいましたが、やっぱりこの人しかいないでしょう、ということでSanaさんにお願いしました。
Sanaさんとは正式には初コンビとなりましたが、今まで録ったどのヴォーカリストよりも歌が上手かったと思います。
THE FINAL公式サイト 楽曲コメント「fellows」
国土交通省関東地方整備局の資料。2022年に右折レーンの延伸工事が完了した。
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