ビートマニアの基礎を完成させたcomp1
1999年1月19日に稼働したbeatmania complete MIX(以下、comp1)。
五鍵1stMIX~comp1までを「ビートマニア第一章」と定義し、これまでの楽曲を網羅した本作だが、その真価はシステム面の刷新にある。
「ピカグレ」「EXスコア」など、現行のIIDXまで変わらずに続く要素の多くは本作で初めて実装されているのだ。
今回は、ビートマニアというゲームの基礎を完成させたと言っても過言ではないcomp1について見ていこう。
ビートマニア1周年記念作品
1998年12月にビートマニアは1周年を迎えた。その翌月、1999年1月19日にビートマニア1年間の集大成としてリリースされたのがcomp1である。
ゲームマシン1999年5月15日 第587号より。コナミはcomp1までを「ビートマニア第一章」としている。
comp1では1stMIX~3rdMIXまでの楽曲を全て収録するとともに、ビートマニア1周年を記念して公式サイトで配布された音源「20,NOVEMBER (HARD MIX)」など4曲を追加。収録曲数は40曲以上という大ボリュームとなっている。
一見すると「旧曲+新曲4曲だけ」と思われがちなcomp1だが、システム面が刷新されており、旧曲であっても新鮮な感覚で楽しむことができるようになった。
そしてこの刷新されたシステムは、以後のビートマニアシリーズの基礎となっていくのである。
ゲーメスト1999年2月28日号に掲載されているcomp1の紹介記事。「エキスパートモードのゲージがGOODでも減る」と書かれているが、これは誤りである。
得点が2倍!光るGREATと20万点スコア
comp1では、従来のGREATよりも正確に打鍵することで「光るGREAT」(通称ピカグレ)となり、この場合得点が2倍加算される。
光GREATの登場によって、ハイスコアを目指すためには従来以上に正確にプレイが要求されることになり、プレイヤーの腕前をより精緻に反映することができるようになった。
なお、3rdMIXでも「GREATコンボが11以上になると判定文字が光る」という演出はあったのだが、これは単なる演出である。「黄GREATより正確に打鍵した場合にピカグレになる」という仕様はcomp1で初めて採用されたのである。
アーケード版3rdMIXのプレイ画面。GREATを11個以上繋ぐと判定文字が光るようになるが、これはピカグレではなく単なる演出。
得点が倍になる光GREATの登場によって、3rdMIXまでの10万点方式のスコアは20万点スコアに変更となり、「20万点スコア」が誕生した。
この20万点スコアはIIDXにも永らく採用されていたが、AC版ではIIDX 28 BISTROVERで廃止、INFINITASでは2022年4月20日午前10時のアップデートで廃止となり、その役目を終えた。
INFINITASのアップデートにより23年間の歴史に幕を閉じた20万点スコア。画像は2022年4月20日にアップデートされる前のINFINITAS。
コンボの廃止!2ndMIXのシステムに回帰
3rdMIXで採用された「GREATコンボ」はcomp1で廃止された。3rdMIXのスコア計算式は「コンボ加点」という独特なものになっていて、通常のスコア計算(従来の10万点スコア)は7万点スコアとして算出し、残りの3万点はコンボを繋げることで加算されるようになっていたのだが、これも廃止された。
前作3rdMIXではオールGREATで10万点(+ボーナス)になる点は2ndMIXと同様だが、オールGREATではない場合、コンボを多く稼いだ方が高得点になるため、「コンボゲー」になってしまっていた。
comp1では、これらを廃止したことで2ndMIXまでのスコア計算に準じた方式に戻っている。なお、厳密にはcomp1の20万点スコアの計算方法はIIDXの20万点スコアとは微妙に異なるのだがここでは割愛する。
余談だが、GREATコンボに関する仕様はアーケード版3rdMIX独自の要素である。家庭用3rdMIXはコンボシステムが採用されていないため、2ndMIXと同様の10万点スコア計算式でスコアが算出されるようになっている。
他のプレイヤーとスコアを競え!インターネットランキング
本作のEXPERTモードは「インターネットランキングモード」という名称になっている。ゲージ減少式のエキスパートゲージ(回復なし)で既定の5曲を連奏するという仕様は3rdMIXと同様なのだが、今作ではインターネットを利用して全国のプレイヤーとスコアを競うことができるようになっている。
comp1のモード選択画面。従来のEXPERTにあたるものが「INTERNET RANKING MODE」になっている。このモードだけパネルが金色になっており、新モードであることをアピールしている。
インターネットランキングモードは、当時急速に家庭へ普及してきたインターネットを利用した画期的な遊びで、プレイ後に表示されるパスワードをメモし、自宅のPC等でインターネットに接続、公式サイト上でパスワードを入力することでランキングに反映されるという仕組みになっている。
comp1でインターネットランキングを採用したことにより、大会などに参加せずとも他のプレイヤーと気軽にスコアを競うことができるようになったのである。
EXPERTモードを利用したインターネットランキングは他のビーマニシリーズにも採用され、IIDXも8th styleまではこの方式でスコアを登録するようになっている。
EXPERTモード専用スコア
EXPERTモード(本作ではインターネットランキングモード)のスコア計算方法が変更され、本作からはEXPERT専用の得点計算方法が用いられるようになった。
光GREATは2点、GREATは1点、それ以外の判定は0点として計算され、ボーダーボーナス等の追加得点は存在しない。従来の10万点スコアと比べると桁数が少なく地味な印象を受けるが、「総ノーツ数の多い曲で良いスコアを出せば、より総合得点を伸ばせる」という特徴がある。
この計算方法はEXPERTモード限定であったが、後に「EXスコア」として他のモードでも表示されることとなり、IIDXでもアーケード版9th style以降及び家庭用作品では単曲のスコアは全てEXスコアが記録されることになる。EXスコアはIIDXのプレイリザルトの中で最も重要な指標として、現行バージョンまで全く同じ計算方法が用いられている。
その後、EXPERTモードが廃止されてからも「EXスコア」の呼称は使われ続けていたが、20万点スコアの廃止に伴い「EXスコア」という呼称も廃止された。
アーケード版IIDX 28 BISTROVERで20万点スコアが廃止されたため、従来のEXスコアが「SCORE」に変更された。
似て非なる譜面!アナザーversion
3rdMIXでは、コマンドを入力することで一部の楽曲の譜面が変化するという隠し要素が存在した。comp1ではこのギミックを「アナザーversion(もう一つの譜面)」と名付け、対象楽曲を更に2曲増やした。
以後のシリーズでは多くの曲にANOTHER譜面が搭載されていき、「黒ANOTHER」及び「Spada†leggendaria」が登場するまで最難譜面の呼称として使用されていく。
comp1公式サイトより。アナザーversionはノーツが増えた分、音が多くなり楽曲も若干変化する。
ビートマニア第二章に向けて
このように、comp1で新たに導入されたシステムの多くは現在のIIDXに受け継がれており、まさにビートマニアの基礎を完成させたバージョンと言えるだろう。
ピカグレの実装でより精度の高い演奏を要求し、EXスコアで実力が反映されやすいルールを導入。インターネットを利用したランキングを実装し、競技としてのビートマニアの素地を作ったのである。
また、五鍵の次回作4thMIXからは「ビートマニア新章」として楽曲を総入れ替えしていることから、comp1は旧曲のアーカイブとしての意義もあり、五鍵ビートマニア筐体を複数台設置していた店舗では、comp1と4thMIXを併設する運用もされていた。
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