AOUショー'99開催!
存在感を増す音ゲー、酷評されるIIDX
1999年2月17日に開催された「AOUショー'99」では各社から音楽ゲームが展示され、音ゲーの存在感が増すショーとなった。
しかし、乱発される音楽ゲームに対して冷ややかな見方をするユーザーも現れ始めた。そんな中、五鍵ビートマニアの続編であるIIDX 1st styleの完成品が出展された。
当時のユーザーやゲームメディアは、このショーをどのように捉えていたのだろうか?
音ゲー vs STREET FIGHTER
1999年2月17日から2日間、幕張メッセで開催された「AOUショー'99」。昨秋のAMショー'98に続き音楽ゲームの出展は多く、ナムコからは「パカパカパッション2」「ジャンピンググルーヴ」。セガからは「フラッシュビーツ」。アトラスからは「バストアムーブ」が出展されていた。
ゲーメスト1999年4月15日号より。コナミ以外のブースでも音楽ゲームを大々的に扱っていることが分かる。
ゲーメストでは、ショー開催直前の恒例記事「〇〇SHOW最強ゲームはどれだ!?」で、事前発表されている情報を基に編集部記者が予想を語る企画が設けられている。今回のショーについては、格闘ゲームの目玉はストIII3rd、音楽ゲームの目玉はDDR 2ndMIXとギターフリークスであるとしている。
なお、この段階では「ドラムマニア」が出展されることは伏せられていたようだ。
ゲーメスト1999年4月15日号によると、今回のショーでプレイ可能な新作格闘ゲームを出展したのはカプコンのみで、音楽ゲームの躍進と対比されている。
ゆさっぴ:ギター以外の楽器モノとかはあるかな?
へな:楽器だといろんなジャンルが考えられるしね。
悪代官:そうなってくると、並べてセッションできるような、ショー限定バージョンで出展されたりしないのかな。DJ、ダンスの次のムーブメントになるものとか。
ノリック:でも、その一方で、音楽ゲームはもう飽和状態なのでは?
マッスル:いや、まだまだいけるんじゃないかな?コナミ以外のメーカーからも出展されるみたいだし…。
こーじ:でも、このジャンルの人気の行方は、やはり音楽ゲームのパイオニア的存在であるコナミにかかっている部分が大きいと思うな。
ぜんじ:音楽ゲームはもう独立したジャンルとして、確固たる地位を獲得するのでは。ただし、今までのようにインカムは稼げるかどうかはわからないが、DDR2ndMIXだけは別格だろう。
悪代官:ということで今回のAOU最強ゲームはストIII3rdとDDR2ndMIXの一騎打ちになりそうかな?
ゲーメスト 1999年3月15日号
ビーマニ新機種も多数出展
コナミは自社音楽ゲーム群「ビーマニシリーズ」の新機種を多数投入。音楽ゲームのパイオニアとして圧倒的な存在感を見せている。
AMショー'98に参考出展された「ビートマニアIIDX」の他にも、大ブームを巻き起こしたDDRの続編「DDR 2ndMIX」、ポップンミュージックの続編「ポップンミュージック2」、ギター演奏をシミュレートする「ギターフリークス」を出展。
更に事前情報無しでショー当日に発表された隠し球として、ドラム演奏を体感できる「ドラムマニア」がお披露目された。
実在する楽器で演奏!「ギタフリ」「ドラマニ」
ビーマニシリーズの中でも異彩を放っていたのが、今回のショーの隠し玉であった「ドラムマニア」だ。
画面に流れてくるノートに合わせてタイミングをとる、というのは既存のビーマニシリーズと同じ。だが、操作感が最も「実際の楽器のプレイ感覚に近い」ということがあって、プレイ中に感じる高揚感は凄まじく真に迫っている。
ゲーメスト 1999年4月15日号
この2機種は、ビーマニシリーズでは初の「実際の楽器を基にした音楽ゲーム」として、注目を集めるとともに、両機種を接続しての「セッションプレイ」も参考出展されており、実在する楽器をモデルにした機種ならではのアイデアといえるだろう。
ギターフリークスとドラムマニアの「セッションプレイ」(試行バージョン)。同年7月に稼働するギターフリークス2ndMIXで正式採用されることとなる。
圧倒的存在感を放つDDR 2ndMIX
今回のショーで出展されたビーマニシリーズの中で最も勢いがあったのがDDR 2ndMIXであった。試遊台には長蛇の列ができ、マスコミの取材も多かったという。
ゲーメスト 1999年4月15日号より。DDR2ndMIXだけでなく、他のビーマニシリーズを含めたコナミブースの盛況ぶりが伝わってくる。
この時期ゲーセンで稼働していたDDR 1stMIXはインカムランキングトップを独走しており、五鍵ビートマニアのブームがひと段落しつつあるタイミングでバトンタッチするかの如く新たな社会現象を巻き起こすことに成功したといえるだろう。
稼働直前!完成版のIIDX 1st style
昨秋のAMショー'98では「ビートマニアIIDX(仮)」として「完成度0%」という状態で参考出展されていたIIDX。このショーの翌々週に稼働開始となっていることから、製品版と同等のバージョンが出展されていたと思われる。
AOUショー'99を特集した香港メディアの映像にIIDXのプレイ映像が残されているが、判定文字やコンボ表示など製品版と同じ仕様になっている。
AOUショー'99を報道している香港メディアの動画(注:外部サイト)。判定文字がAMショー'98版(IIDX for JAMMA SHOW version)とは異なり、製品版と同じになっている。
音ゲー草創期より存在する、首かしげ厨を母体とする勢力。ゲーセンの環境改善を名目に、振り向き厨をモグモグするなどの抗争を繰り返している。電子マネー「MOG」をIIDX公式通貨に認定させるなど、公式への太いパイプを持つと噂されている。
上の動画の最後に「SPECIAL THANKS」として「KONAMI H.K.LTD.」とあるが、コナミ香港は1994年9月に設立された法人である。
この動画では出展されていたビーマニシリーズを一通り取り上げており、香港のゲームセンターでも音ゲーが稼働していたものと推察される。
AMショー'98でビートマニアの香港チャンプが出場していたが、香港でも大会が開催できる程度の音ゲーマーが存在していたのだろう。
新機種ラッシュに賛否両論
ゲーメストではショー終了後に「〇〇SHOW最強ゲームはこれだ!」という記事を掲載するのが恒例である。今回のショーでは各社様々な音楽ゲームが出展されていたが、来場者の反響は賛否両論だったようだ。
●ドラムマニア(コナミ):誰もが考えそうなアイデアだが、実現しているのはコナミだけ。非常によい。(オペレーター 27歳 男性)
●ギターフリークス(コナミ):小学生や中学生の頃、掃除の時間にほうきを持ってギター演奏のマネを誰もがしたことがあるはず。そんな感覚を思い出した。(オペレーター 26歳 男性)
●バストアムーブ(アトラス):手だけでやっていたゲームを、身体を使ってやるとさらにハマった。(会社員 30歳 男性)
●流行なのはわかるが、音楽ゲームが多すぎ、それ以外にこれといったものがない。(オペレーター 男 22歳)
●音ゲーも、少し前の格闘ゲームのようにマニア指向になっている気がした。このまま素人お断りのようにはなってほしくない。(オペレーター 男 22歳)
●ナムコの体力使う系に将来性を感じた。音ゲーは出尽くしたって感じ。(メーカー 男 26歳)
●新作を見に来たのか、自分のウデを見せびらかしに来たのかわからん奴にムカついた(DDR2ndとか)。(オペレーター 男 23歳)
●音楽系が相変わらず目立つが、難度が比べものにならないほどに上がっていて、ライトユーザーへのアピールは難しいのかも。(オペレーター 男 28歳)
ゲーメスト 1999年4月15日号
ゲーメスト1999年4月15日号より。AOUショー'99における音楽ゲームの存在感が伝わってくる。
AMショー'98までのは、新規顧客に対する集客力など良い効果が注目されていた音楽ゲームだが、今回のショーでは各社から音楽ゲームが大量に出展されたこともあってか、「音楽ゲームの乱発による飽き」や「高難度化・マニア化」を危惧する声が出始めている。
かつて格闘ゲームブームがそうであったように「ヒット作の出現後に、似たようなゲームが乱発され、マニア化してブームが終息する」という流れを音楽ゲームも辿っていくのではないか?間もなく衰退期が始まるのではないか?という不安も出始めていたのである。
だが、ゲーメスト編集部は今回のショーの総括として、「音ゲーはジャンルとして定着した」と評している。シンプルなゲーム性でライトユーザーを集客できるという魅力は確かに存在しており、今後はコアユーザーを長く楽しませる工夫が必要になると語っている。
今の音楽ゲームは、一般層の求心力を喚起しやすい「シンプルなシステム」を基幹としつつも、細分化やインターネットランキングシステムを導入して、上級者のプレイアビリティにも応えていこうと模索している真っただ中である。
確固たる一大ジャンルとして定着した「音ゲー」だが、このジャンルが将来どのような進化を遂げていくのか、興味深く見守っていきたい。
ゲーメスト 1999年4月15日号
格闘ゲームブームが一服し、プリクラブームの次に訪れた体感ゲームブーム。
AOUショー'99では、音楽ゲーム以外にも様々な大型体感ゲームの出展が目立っており、数年前から課題とされてきた「家庭用ゲーム機の高性能化に対する差別化」については一定の答えを見出せたといえるだろう。
ゲーメスト1999年4月15日号より。元々はビートマニアも「DJの体感シミュレーション」という括りで扱われていたが、音楽ゲームという独立したジャンルを確立した。
メジャー級タイトル!?酷評されるIIDX
ゲーメスト1999年4月15日号では、「AOU SHOW座談会」と称して、ショーの総括を行っているのだが、この記事の中で出展タイトルのクロスレビューが掲載されている。
AOUショー'99に出展された全タイトルを対象に、ゲーセンオペレーターやユーザーからの人気投票を行い、上位10位のタイトルに対してゲーメスト編集部がクロスレビューを行うという企画である。
レビュアーは、石井ぜんじ氏・KITAN氏・RED氏・スー氏・若人氏&アストロ氏の5枠で、5段階評価をしている。
ゲーメスト1999年4月15日号より。レイアウトからして完全にファミ通のクロスレビューである。
【1位】クレイジータクシー[20点]
【2位】ギガウイング[19点]
【2位】ハイドロサンダー[19点]
【4位】ストIII 3rd[18点]
【4位】ドラムマニア[18点]
【6位】DDR 2ndMIX[17点]
【7位】バトルギア[15点]
【8位】RCでGO![14点]
【8位】ギターフリ―クス[14点]
【10位】ビートマニアIIDX[13点]
オペレーターやユーザーからの人気ランキングでは6位だったIIDXだが、ゲーメスト編集部のクロスレビューでは最下位になっている。評価は「3・3・3・2・2」で合計13点。平均2.6点である。
これをファミ通のクロスレビュー(4枠×10段階)にあてはめると、「2.6点×4枠×2倍」で、20.8点相当になる。
参考までに、ファミ通のクロスレビューでこの得点に近いのは「メジャーWii 投げろ!ジャイロボール!!」(21点)、「人生ゲームWii」(21点)である。
このゲーメストによるクロスレビューは、最高得点のクレイジータクシーが20点(ファミ通基準で32点相当)と、ファミ通のクロスレビューよりも辛口の採点ではあるものの、IIDXが低評価だったことには変わらない。
では、ゲーメスト編集部はIIDXをどのように評価していたのだろうか。詳しく見ていこう。
石井ぜんじ氏【3点】
ビートマニアシリーズのまさにデラックス版。腕自慢のプレイヤーが8鍵を使いこなして演奏できれば、目立つこと間違いなし。
筐体の大きさもデラックスなので、限られた大都市ゲーセンでステイタスとなるだろう。1プレイの値段がビートマニアと同じなら、もっとプレイする人が増えそう。
ゲーメスト 1999年4月15日号
KITAN氏【3点】
うお~!混乱するぅ~!やはり、ビートマニアをロクに触りもしなかった人間が、いきなり8鍵に挑戦するのは無謀だったか!が、自分で5~8鍵まで自由に選べるのは、私みたいなのにはいいかも。
画面中央に映し出されるムービーにも注目すべし!なんか凄いことになってます。
ゲーメスト 1999年4月15日号
RED氏【3点】
人気のあるジャンルなら、スーパーマニアを対象にしたゲームは出てきて当然なんでしょう。
もちろん、このIIDXもそういうゲームであることは間違いなく、ビーマニをちょいとかじったくらいのプレイヤーには敷居が高く感じられるかもしれない。ビーマニマニア向けです。
ゲーメスト 1999年4月15日号
スー氏【2点】
いくら簡単なモードを用意したからといっても、やはりやり過ぎ感は強い。1プレイ料金の高さや、左右非対称のコンパネも疑問。筐体デザインはこれ以上ないくらいカッコイイが、値段と大きさで、どれほど店に出回るのかも疑問。
そろそろみんなもクラブ音楽に飽きてきた感も強いしな。
ゲーメスト 1999年4月15日号
若人氏&アストロ氏【2点】
若:とりあえず筐体の左右対象の作りに問題があるね。
アス:たしかに。会場でも2P側が人気だったし。
若:で、ゲームのほうは曲を増やして、ついでにボタンを増やしましたって感じ。
アス:なんかボタンを叩くということ以外にも、システム的になにかほしかった。
若:曲と曲をつなげるとか。
ゲーメスト 1999年4月15日号
評価が低い原因は主に「鍵盤を増やしただけで斬新さが無い」「1P側のターンテーブルの配置が逆なのはおかしい」「プレイ料金が高い」といったところだろう。
以前の記事で紹介したように、IIDXはあえてゲーム性を五鍵から大きく変えずに1P側のターンテーブルを逆に配置することで、DPも含めたプレイスタイルの幅を広げるという狙いがあった。しかし、これがマイナス要因と捉えられてしまい、低評価になってしまったようだ。
なお、このレビューで石井ぜんじ氏とKITAN氏が「8鍵」という表現を使用しているが、今回展示されたIIDXは稼働直前の状態であり、もちろん鍵盤は7個である。先ほどの香港メディアの動画でも鍵盤の配置はしっかり映っている。
おそらく、レーンの総数がターンテーブルを含め8個であることから「8鍵」と認識していたものと思われる。KITAN氏の「5~8鍵まで自由に選べる」という発言から、この段階で「4KEYSモード」も実装済であると推測できる。
なお、石井ぜんじ氏は座談会においてIIDXを「ビートマニアファンにとっては申し分ない作り」と評価しており、筐体の価格が高いことがネックになるかもしれないとも語っている。
ぜんじ:スピーカーの豪華さやコンパネ回りなど、ビートマニアファンとしては申し分ない作りにはなっていると思うが、その分筐体の価格も上がるだろうから、出回りはやや厳しいかもしれないね…。
ゲーメスト 1999年4月15日号
AOUショー'98はビーマニシリーズをはじめとする音楽ゲームが猛威を振るった。ブームに陰りが見えるとの心配も出始める中、ゲーメストでメジャー級の低評価を食らってしまったIIDX 1st styleは、果たしてユーザーの期待に応えることはことができるのだろうか?
そして翌々週の1999年2月26日、遂にIIDX 1st styleが稼働することになる…
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